2021年の不動産投資動向は?過去データを考察し今後の市場を解説

  1. 基礎知識
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2020年は、新型コロナによる足元の経済が大きなダメージを受けました。実体経済にそぐわない株価の高騰などで、不動産投資家にも動揺が広がったかもしれません。

不動産投資家やこれから不動産投資を始める人は、2021年の不動産投資はどのように推移するのかに着目しています。この記事では、過去のデータなどを考察し、2021年の不動産投資状況について解説しています。最後まで読んでいただければ、今後の不動産投資成功のヒントを得られるでしょう。

 

2020年の不動産投資家調査の結果

2020年の不動産投資家調査の結果

2020年の不動産市場を振り返れば、地価が下落しマンションの新規契約率は低下ししています。しかし、東京を中心に首都圏のマンションは価格が下がることなく推移していました。 新型コロナウイルスによって社会や経済は大打撃を受けたものの、株価は実体経済とかけ離れた高値で推移しています。では、2020年の不動産投資は、どのように推移したのかを不動産研究所の調査結果を参考にして解説します。

一般社団法人 日本不動産研究所:不動産投資家調査2020年10月現在

https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2010/10/kohyou20201125.pdf

 

投資用不動産の利回り

投資用不動産の利回りについては、新型コロナウイルスや働き方改革により、社会全体が新しい生活様式へと転換していく影響を受けたことが鮮明となっています。

新型コロナウイルスが蔓延する以前は、利回りの低下傾向が続いていたオフィスや住宅の期待利回りが、1部調査地区で前回比0.1ポイント低下。全体としては前回比横ばいの地区が多くを占めています。

都新型高級専門店の期待利回りも多くの地区で前回比横ばいですが、銀座では前回比0.1ポイント上昇。郊外型ショッピングセンターの期待利回りは前回比横ばいの地区が多くを占めました。

新しい生活様式による影響で、施設需要が伸びている物流施設は、東京を含む多くの地区で期待利回りが0.1から0.2ポイント低下しています。また、観光インバウンドが長く市場を兼任にしていた宿泊特化型のホテルの期待利回りは、東京・札幌・福岡・那覇などで前回比0.1ポイント上昇しました。

※前回調査は2020年4月です。

 

不動産投資への意欲

不動産への投資意欲としては、不動産投資家の今後1年間の投資に関する考え方の回答では「新規投資を積極的に行う」が92%で、前回調査よりも6ポイント上昇しています。一方「当面新規投資を控える」の回答は11%で前回調査より7ポイント低下しました。

2020年4月の前回調査では、緊急事態宣言が社会経済活動の自粛により、不動産投資家の新規投資意欲が減退していました。しかし、今回の調査では、ホテルや都心型商業施設の一部で期待利回りが上昇するなどの慎重な見方もありますが、大規模な金融緩和等に支えられていて、全体としては不動産投資家の積極的な投資姿勢が強まったといえます。

 

不動産タイプ別の期待利回り

不動産タイプ別の期待利回り

期待利回りとは、不動産投資した費用に対して、何パーセントの収益を期待できるのかを表す不動産投資における年間収益の期待値です。他の利回りとは、意味する内容や評価に違いがありますため注意が必要です。

不動産投資調査などで、期待利回りが下がることが意味するのは「利回りが低くても、不動産投資に積極的である」ということを意味します。期待利回りが上がるということは「利回りが高くないと不動産投資をしない」という消極的な意味をもつのです。

ここでは、各不動産タイプの期待利回りのデータから2020年の不動産投資市場を分析し2021年の動向を探っていきます。比較対象となる調査は、日本不動産研究所:不動産投資家調査第42回2020年4月調査と第43回2020年10月調査です。

一般社団法人 日本不動産研究所:不動産投資家調査2020年10月現在

https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2010/10/kohyou20201125.pdf

 

オフィスビル

期待利回り(東京)単位%

丸の内・大手前 日本橋 虎ノ門 赤坂 六本木 港南 西新宿 渋谷 池袋
第42回 3.5 3.7 3.8 3.8

 

3.8 3.9 4.0 3.8 4.2
第43回 3.5 3.7 3.7 3.8 3.8 3.8 4.0 3.8 4.2
前回差 -0.1

期待利回り(主な政令指定都市)単位%

札幌 仙台 横浜 名古屋 京都 大阪・御堂筋 大阪・

梅田

広島 福岡
第42回 5.4 5.5 4.8 4.8 5.1 4.5 4.5 5.7 4.9
第43回 5.4 5.5 4.8 4.8 5.1 4.5 4.4 5.7 4.8
前回差 -0.1

報道では、テレワークの影響で都心を離れてオフィスを移転する企業が現れているとのことですが、表のように東京をはじめ、主要都市の期待利回りに大きな変化はみられません。概ね横ばい傾向ですが、東京・大阪・福岡では、0.1ポイント低下の現象がみられますので、投資意欲は継続からやや積極的と判断できます。

 

ワンルームタイプ1棟

期待利回り(東京)単位%

城南地区 城東地区
第42回 4.2 4.5
第43回 4.2 4.4
前回差 -0.1

※城南地区とは、港区、品川区、目黒区、大田区の4区のエリア

※城東地区とは、中央区、台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区の6区を含む江戸の中心であった地域で、東京湾沿いも含むエリア。

期待利回り(主な政令指定都市)単位%

札幌 仙台 横浜 名古屋 京都 大阪 神戸 広島 福岡
第42回 5.5 5.5 4.9 5.0 5.2 4.8 5.2 5.7 5.1
第43回 5.5 5.5 4.9 5.0 5.2 4.8 5.2 5.7 5.0
前回差 -0.1

ワンルームタイプの賃貸住宅においては、データを見る限り概ね横ばいですので、不動産投資意欲の低下は見られません。東京の城東地区と福岡においては、0.1ポイント下がっていますので、ワンルームタイプへの投資意欲は向上しているといえるでしょう。

 

商業店舗

期待利回り(都心型高級専門店)単位%

東京銀座 札幌 仙台 名古屋 京都 大阪 神戸 広島 福岡
第42回 3.4 5.5 5.5 5.0 5.0 4.5 5.2 5.6 5.0
第43回 3.5 5.5 5.5 5.0 5.2 4.8 5.2 5.7 5.0
前回差 -0.1

商業店舗の都心型高級専門店のデータでは、東京銀座を除く全ての主要都市で前回の調査と同じ結果が出ています。東京での不動産投資力は向上しているものの東京以外の主要都市については、不動産投資意欲が横ばい状態です。

尚、郊外型ショッピングセンターの期待利回りの各主要都市データでは、前回と同じ結果となっています。このデータから分かることは、郊外型ショッピングセンターへの不動産投資意欲については横ばいということです。

 

物流施設

期待利回り(物流施設)単位%

東京(江東区) 名古屋(名古屋港) 大阪(大阪港) 福岡(博多港)
第42回 4.5 5.0 5.0 5.1
第43回 4.3 5.0 4.9 5.0
前回差 -0.2 -0.1 -0.1

物流施設への期待利回りについては、名古屋を除いて全て低下しています。つまり、新型コロナウイルスの影響や働き方改革により、今後も物流施設の需要は高まると判断できるため、不動産の投資意欲も向上しているのです。

 

宿泊ホテル

期待利回り(宿泊特化型ホテル)単位%

東京 札幌 仙台 名古屋 京都 大阪 福岡 那覇
第42回 4.5 5.3 5.7 5.3 5.0 5.0 5.1 5.4
第43回 4.6 5.4 5.7 5.3 5.0 5.0 5.2 5.5
前回差 0.1 0.1 0.1 0.1

新型コロナウイルスの影響を大きく受けたのは宿泊特化型のホテルです。データでは、東京・札幌・福岡・那覇がプラスに転じています。このことから、2021年も新型コロナウイルスの終息が見えなければ、宿泊特化型ホテルへの不動産投資意欲は低下すると判断できます。

 

新型コロナと不動産投資市場

新型コロナと不動産投資市場

新型コロナウイルスは、すでに日本国内で蔓延しています。ワクチン接種が大多数の国民に行き届き、集団免疫をもたなければ、沈静化のすることが難しいとされています。新型コロナウイルスが、不動産投資市場にどのような影響をもたらせたかも確認しなければなりません。一般財団法人日本不動産研究所が特別調査した新型コロナと不動産投資市場のデータを基に解説します。

一般財団法人 日本不動産研究所:新型コロナと不動産投資市場

https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2010/10/kohyou20201125.pdf

 

不動産投資家の新型コロナの影響認識

新型コロナウイルスが不動産投資家にどのような影響を与えたかのアンケート結果が出ていますので下記の表を確認してください。

新型コロナが不動産投資市場に及ぼした影響と今後の動向についての認識調査

ネガティブな影響を受けたがその影響から既に脱している 0.7%
ネガティブな影響を受けたがその影響から脱しつつある 14.0%
現在ネガティブな影響を受けておりこの状態が1年程度続く 37.5%
現在ネガティブな影響を受けておりこの状態が2年から3年程度続く 27.9%
現在ネガティブの影響を受けており今後さらにその影響は深刻になる 5.9%
ネガティブな影響はまだ現れていないが2021年以降その影響が現れる 6.6%
ネガティブな影響は現れていない、今後も影響はない 3.7%
その他 3.7%

この結果を見ると影響を受けていない人は10.3%です。そのうち今後も新型コロナウイルスの影はないと答えた人は3.7%で、6.6%の人が2021年以降に影響が現れると答えています。また、大半の人は何らかのネガティブな影響を受け、新型コロナウイルスの影響から既に出している人と脱しつつある人を合わせて14.7%です。約7割の人は、現在ネガティブな影響を受けておりその影響が続くと答えています。

 

調査結果概要

新型コロナウイルスが不動産投資市場に及ぼした影響と今後の動向については「現在ネガティブな影響を受けておりこの状態が1年程度続く」と該当する人が最も多い結果が出ています。一方で「ネガティブな影響を受けたがその影響から脱しつつある」との回答も一定の割合を占めました。

新型コロナ過の中で、不動産投資市場にとってインパクトが大きかった事柄は、世界的な渡航制限です。インターナショナルな人の往来が激減したのは、経済に与える影響も大きいと判断できます。また、テレワークの普及に伴う構造転換の影響も大きく、オフィスのスペックや機能等に対するニーズが多様化し、最先端の設備を整える必要があると懸念する不動産投資家も多いようです。

しかし、新型コロナウイルスが経済や不動産投資市場に大きな影響を与える中で、不動産投資姿勢に特段の変化が見られないのは、不動産投資が新型コロナウイルス禍であっても安定した収益を確保できるためと考えられます。

 

不動産投資の今後1年間

不動産投資の今後1年間

2020年の不動産市場や不動産投資家の心理状況などを分析しましたので、2021年の不動産投資市場の動向について解説を進めます。不動産投資市場は、景気・需給・不動産市場の状況・不動産投資家の心理・融資状況・金利などによって大きく変化します。

 

1年間の不動産投資への考え方

現況からみて、2021年度も新型コロナウイルスによる経済の混乱は、新しい生活様式が定着してもしばらくは続くと考えられます。新型コロナウイルスの感染者減少と共に経済活動を回復させるために、日本だけではなく、世界的に低金利政策が続いています。2021年もこうした状況が続くものと判断するほうが妥当でしょう。このような状況は、世界的な株高をもたらすとともに、不動産投資においても活況が続く背景となるのです。

 

市況感

不動産市況の全般論として、2021年の都市部における不動産市況全体に大きな影響はないと思われます。しかし、新型コロナウイルスが欧米並みに感染拡大したり、第4波、第5波と続くようであれば、都市部の商業施設の需要は大きく減退し、地下の下落も懸念されます。このような状態にまで経済が悪化すれば、不動産投資市場にも大きなダメージを与える可能性はあります。

2020年並みの新型コロナウイルスの感染状況であれば、影響の大小があるものの大きな落ち込みやマイナス基調になることはないと考えられます。ワクチンの接種がすすみ、新型コロナウイルスが沈静化すれば、影響の反動による経済の急回復が見込まれる可能性も考慮しておくとよいでしょう。 経済の急回復の先には、インフレーションと増税が必然的にやってきますので早めの対策が必要です。

 

金利や融資に大きな変化なし

不動産投資に大きな影響を与える金利ですが、日銀の超低金利政策はしばらく続くと考えられます。また、先進各国の中央銀行の動向も同様に、低金利政策がしばらく続きそうです。ただし、世界的な国債の大量発行などをとらえると、将来的なインフレーションは避けられないでしょう。従って、超低金利の間に不動産投資を行い、増税とインフレ対策として、不動産資産を持つということは有意義だと考えられます。

融資については、新型コロナウイルスの影響で個人融資が増加した2020年に比べると、感染者減とともに落ち着く傾向へと向かうと予測されます。不動産投資についての融資は、2020年と同様に横ばいから、やや上昇傾向だと想定されます。超低金利の間に、不動産投資を積極的に行う不動産投資家が増えれば、不動産投資向け融資の増加傾向が強まる可能性もあります。

 

オリンピックが不動産投資に与える影響

※画像出典:みずほ総合研究所

※画像出典:みずほ総合研究所

不動産市場は転換点にあるのか

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/urgency/report180710.pdf

東京オリンピックが開催されたとして解説します。グラフは、みずほ総研研究所が発表した夏季オリンピックが開催された都市とその国住宅価格の推移を表したグラフです。このグラフから読み取れる内容は、夏季オリンピック開催決定後の住宅価格は右肩上に上がり続ける傾向であり、オリンピックが開催された後も、住宅価格は下がることなく上がり続ける傾向となっています。

このデータから読み取れることは、オリンピックが終了しても住宅価格は、伸び続けるということです。このデータを2021年の東京オリンピックが開催されたとして当てはめると、東京を含めた日本の住宅価格は、東京オリンピック終了後も伸び続けると判断できることになります。

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからなければ、2021年の東京オリンピックコ開催は困難となり、延期ではなく東京オリンピックそのものが、中止になる可能性もあります。もし、東京オリンピックが中止になった場合に不動産投資市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。まず、考えられるのは、商業施設の消費が落ち込むことになるダメージです。地価の下落も覚悟しなければなりません。しかし、住居用不動産に関しては、一時的な下落はあるかもしれませんが長期的なダメージは少ないでしょう。不動産投資市場においても、一時的な下落があったとしても、通常の状態に戻るだけですので、大きな影響は受けないと判断されます。

 

2021年不動産投資動向のまとめ

2021年不動産投資動向のまとめ

2021年不動産投資市場は、経済全体が新型コロナウイルスの影響により、ある程度左右されることは、覚悟をしなければならないでしょう。

また、テレワークなどの導入が進み、働き方改革の推進により、都市部のオフィスへの通勤の需要は弱まり、地方から首都圏へと流入していた若者人口の一部が地方へと流れる可能性もあります。これまで通り首都圏一極集中への流れが続くのか、都市部から郊外への移住の動きが加速するのかの分かれ目が2021年ではないでしょうか。

2021年の不動産投資に迷われたら、この「不動産の経営学」をご利用ください。最新の不動産投資動向から、不動産投資の基礎知識まで多くの記事を網羅していますのできっとお役に立つことができます。

【記事監修】高野友樹

株式会社アーキバンク取締役COO/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士

不動産会社にて2,000件以上の賃貸売買仲介に関わり、6,000戸の収益物件の管理業務を経験した後、年間で36.9万平米を超える賃貸契約面積を獲得している国内有数の不動産ファンドであるGLR(ジーエルアールインベストメント株式会社)にてAM事業部のマネージャーとして従事。

大規模物件の売買仲介を中心に、投資家へのコンサルティング業務を行い、100億円規模の物件の取引に携わる。2019年より株式会社アーキバンクに参画し、不動産事業部統括責任者として取締役に就任。

不動産投資家の所有物件の買い替えによる資産整理や遺産相続など、その経験と知識を生かしたコンサルティング業務を行っている。

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